2014年3月17日月曜日

語学学校って何?

こんにちは、レンヌ第二大学付属CIREFEにて語学留学中の志村です。だいぶご無沙汰してしまいましたが、今回は前回の宣言通り、“語学学校”とはそもそも何なのか、どんなところが面白いのか、僕の通っているCIREFEについて触れながら紹介したいと思います。

まず、フランス留学と一口に言っても千差万別いろいろありますが、“フランス語”だけは絶対の共通項。そのフランス語を集中的に学ぶのが、文字通りですが語学学校なわけですね。ところで、集団には普通いつでも“目的”が伴います。経済学部なら経済を、法学部なら法を勉強してあわよくば仕事で活かすのが目的でしょうし、料理教室の目的は上手に料理ができるようになることです。そうやって自然と、世代的にも趣向的にもどことなく似通った人間が集うことになります。しかし、語学学校の場合どうでしょう?まずこれを考えないといけません。ポイントは二つあって、まず一つには、言語というのはあらゆる意味でも専門的ではなく、生活の全般をカバーするものであるということ。人が生きていくことの根底にあるものであるということ。そしてもう一つは、フランス語を学ぶための場所である語学学校がフランスにあるということです。フランスに暮らしている人にとっては、フランス語は目的というよりは成し遂げなければならない課題であったりします。つまり、ここに集う人たちは必ずしも同じ目的を持ってはいません。というか本当におそろしいくらいバラバラです。“le français”(フランス語)というあまりに漠然としたものを頭の上に乗っけて人が集まって来るのです。自国で出会ったフランス人と結婚し、フランスに移り住むにあたってフランス語の習得が必要になったロシア人、もともとムスリムだったけれどキリスト教に改宗したために母国に住めなくなり、政治難民としてフランスへの移住を決めたイラン人、かれこれ15年近くフランスに住んでいるから会話は難なく出来るけど、文法がまったくわからないアルバニア人、フランスの大学に進学するためにそれ相応の語学レベルに達するべく、その準備段階として通う中国人、ほとんど興味本位で一年ふらっとやってきた日本人、などなど、てんでバラバラ。これが語学学校の大前提です。

そんな、国籍も年齢もまちまちな僕たちを区切る唯一の指標が、やっぱりフランス語です。僕の通う語学学校CIREFEでは、A1,A2,B1,B2,C1,C2と進むにつれだんだんレベルが上がっていきます。これはDELF・DALFという国際的なフランス語能力認定試験のレベルに準じています。レベルごとにどんなことをやるのか大まかに説明すると、Aレベルでは基本的な初級文法や簡単な日常会話の習得、Bレベルでは最終的には精緻な文法理解とある程度の会話能力の会得、Cレベルでは文法も会話もできて当然で、文章の統括や高度な口頭発表ができることなどが求められます。なんて言いますが、“語学力”ほど曖昧なものはなく、各人の能力を6つにすぱっと分けるには自ずと無理が生じます。僕の場合を例にとってみると、去年9月の入学時、最初に振り分けられたクラスはB2でした。CIREFEの場合クラスの振り分け試験は筆記しかなく、僕は当時すでにある程度文法を理解していてたいしたミスもなく文章を書くことができたのでB2に認定されたわけですが、これは必ずしも僕の能力を正しく反映しているわけではありません。たまたま僕のいちばんの強みが評価基準になっただけで、他の能力、特に聞き取りなんかは間違いなくAレベルだったと思います。だから最初は本当に苦労しました。なぜなら、B2ともなればある程度は聞き取れて当然とみなされ、先生たちもとくにゆっくり話すでもなく普通に授業を進めるからです。そう、フランス語の学校なのに授業で使う言語もフランス語というのはなかなか盲点かもしれません。そんな“ズレ”に苦しまされ、なんだ先生いったい何を言ってるんだと苦労している僕の横で、すでにペラペラだった例のイラン人は僕からしたら知ってて当たり前の文法事項でつまづいたり、ごく簡単なディクテ(これはゆっくり言ってくれるから助かる)で聞き直したりしているのです。これはまったくもって謎でした。いや、今でも謎です。

謎です。

なんで文法がわからないのに話せるのか?

なんで自分で言ってることを書けないのか?

なんで書いてあることを正しく読めないのに会話ができるのか?

ただ、やはりよく聞いてみるとそういう人(ヨーロッパ系が多い)はかなりむちゃくちゃなことを言っていたりします、それでも通じるのがやはり謎ですが。もともと近い言語を持つスペイン人なんかはずいぶん適当なことを言っても大枠は外さずに会話が出来るのです。対して日本人や中国人なんかは、正しく話さなければと思い詰めて結局何も言えなかったりします(とくに日本人)。言語に限らずものごとは遠くから見た方がよく見え、そんなわけで僕らアジア人は丁寧にコテコテに文法を理解していくしかないのです。

[caption id="attachment_178" align="aligncenter" width="300"]R0013959 前期B2、文法の授業の最終回。最終回ということで先生がワインやお菓子をふるまってくれた。[/caption]

ただ、今は最初のクラスがB2で本当によかったと思っています。確かに苦労はしましたが、そのおかげでつく能力があるのも確かです。最初は何もわからない子供のようでしたが、たからこそ、がむしゃらにもがいてついていけるようになりました。ここで一つアドバイスをするなら、もし語学留学を決め、出発までに時間があるなら、文法など日本にいても勉強できることは十分に身に付けてから来た方が絶対にいいです。文法は、戦うための武装であり、踊るための衣装です。ちゃんと着替えてから来れば、あとは実践あるのみ。時間は限られているのだから、その方が効果的なのは歴然としています。あともう一つ言うなら、B1でどうなのかは知りませんが少なくともAレベルでは学生同士の会話はほとんど英語になってしまいます。フランス語は習いたてなのでしょうがないことですが、せっかくフランスにいるのになんとももったいない気がします。B2で英語を話すのはアメリカ人とあまりに英語がペラペラなやつの間くらいで、他はみなフランス語で話します。

そうそう、これが面白いのです(笑)。みんなが喋る、各国アレンジのフランス語を聞くことができるのは語学学校の醍醐味の一つです。とくに英語、スペイン語、中国語など癖の強い言語の話者のフランス語にはたいていの場合、母語が憑依します。もともと平坦な言語であるはずのフランス語に波が生まれるのです。これを避けるのは相当むずかしいようで、だからまったく癖なくフランス語を話すアメリカ人なんかを見ると僕は感心します。その点日本人は有利です。日本語もかなりフラットな言語ですから、フランス語の流れるようなリズムをそのまま受け入れることが出来ます。ロシア系やアラブ系は、見ているとかなり語学習得に長けているようです。癖もないし、発音もかなりはっきりしている印象ですが、これはロシア語やアラブ語にもともと多くの音が存在しているからだそう。

このように、フランス語を通していろいろな国の人たちと仲良くなれることが語学学校のいちばんの魅力だと思います。まったく違う文化で違う時代を生きてきた人と、共通の目的であるフランス語を通して対等に語り合うことが出来る。これはなかなかない経験です。日本にいてはなおさら持てない機会でしょう。

[caption id="attachment_177" align="aligncenter" width="300"]クラスのみんなでのフェット(ソワレとも言う、飲み会のこと)。右下の髪ながいのが僕 クラスのみんなでのフェット(ソワレとも言う、飲み会のこと)。右下の髪ながいのが僕。[/caption]

ではでは今回はこの辺で!

志村 響

1 件のコメント:

  1. こんにちは 仲直毅と申します

    この度は、ブログの記事の方を拝見しご連絡させていただきました

    早速ですが、私来年の一月から4月までレンヌの方にワーキングホリデーをしようと考えているのですが、何かそういった情報を教えていただけたら幸いです

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