2014年3月26日水曜日

フランス語のすすめ

こんにちは、CIREFE在籍の志村です。

今回は「フランス語のすすめ」と題して、生意気にもフランス語プチ講座をやっちゃおうと思います!もっぱら“発音”に焦点を当てて書いてみるつもりです。なぜこんなことを思い立ったかというと、日本で出回っている参考書の類があまり信用ならないからですね。ちなみにその元凶は“カタカナ”です。

 

さて、突然ですがカタカナと英語の距離感について考えてみました。それでわかったのが、英語とのこの可もなく不可もない絶妙な距離感こそが、外国語は全てカタカナで置き換えられるという幻想を日本人に抱かせてしまったんじゃないかということです。

 

どういうことか?例を見てみましょう。

 

“現代芸術”を英仏で比べてみます。

 

英:Contemporary Art

コンテンポラリー アート

 

まぁ、細かいところをつっこまなければいいとしましょう。

では次、

 

仏:Art Contemporain

アール コンタンポラン

 

ちょっと待った!

これです。こういう悲劇がフランス語ではあり得るのです。

 

フランス語をちょっとでも知っている人ならわかると思いますが、ここにはいくつものトラップがあります。まずは鬼門と言われる“r”の音。喉を使って発音し、いろいろな表情を見せるユニークな音ですが、「アール」は論外。“Art”を正確に記述できるカタカナは残念ながらありません (“r”の発音についてはこれといってコツというのもありません。よく聞いて、真似をする。練習あるのみですね笑)。さらに“Contemporain”、これには“r”も然ることながら、鼻母音(鼻を通して発音する母音)と呼ばれるフランス語独特の母音が豪華3点セットで盛り込まれています。ここでは“on”、“em”、“ain”がそれに当たりますが、「コンタンポラン」と言ってしまえば“em”と“ain”の区別がなくなっています。それに“em”は、どちらかというと「オン」に近い音です。

 

そういうわけで、カタカナを信じてはいけません。というかフランス語を勉強する上でたいして有効なツールでもありません。英語の場合にどうしてカタカナが役に立つかというと、発音規則がすこぶる曖昧だからなんですね。綴りを頼りに単語が読めない。だから近似でもいいからカタカナが役に立つ。けれどフランス語では、一度発音規則を覚えてしまえばあとはだいたいその通りに発音できるので、カタカナはそもそも必要ないということです。アクサン記号なども最初は厄介ですが、つまりは正しい発音への道しるべであり、覚えてしまえば味方です。だからまずは、発音規則をちゃんと覚えましょう!

 

それが出来たら、個々の音に注意を向けてみましょう。例えば“eu”と“ou”の綴りでは、敢えてカタカナで書けば両方「ウー」ですが全く違う音です。“humeur”は「機嫌」という意味ですが、“humour”は「ユーモア」という意味です。このように、微妙な発音のずれで意味が変わってしまうものが鼻母音に限らず多くあるのがフランス語の特徴。裏を返せば、英語の約半数くらいの量しかない語彙を発音の厳密さで補っているとも言えます。音に敏感になるべきというのはもちろん綺麗に発音するためでもありますが、同時に正確に聞き取るためでもあります。ちゃんと区別ができないとちゃんと聞き取れません。

 

それから、フランス語の性格について考えてみると面白いことがわかります。というのも、とかく特殊な音として扱われがちの鼻母音ですが、実際はそんなこともなさそうなんです。そもそも日本語や英語とフランス語では、喋るときに使っている口の部位が根本的に違います。これは感覚的なものなので言葉で説明するのは難しいですが、一般的なフランス人(と一応断るのは、移民系のフランス人にはあてはまらないから)のフランス語では、口の奥、口腔と鼻腔が分岐するあたりから音を出しています。試しに鼻歌を歌ってみてください。はい、そこです。対して日本語では口全体を広く使い、英語では舌の上あたりしか使っていない気がします、なんとなくですが笑。ともかく、フランス語は鼻を使って喋る言葉です。だから鼻母音は決して特殊な音ではなく、たまたま「アン」とか「オン」とか言おうとしたらそういう音になっただけであり、他の音だって鼻を使うのです。

 

 

では最後にまとめますと、

①発音規則をしっかり覚える

②それぞれの音を意識ししっかり区別する

③風邪を引いたようなつもりで鼻を使って話す

 

これであなたもきっと、

フランス人のような発音ができるようになります(責任はとりません笑)

 

 

それではまた!

 

 

 

志村 響

2014年3月17日月曜日

語学学校って何?

こんにちは、レンヌ第二大学付属CIREFEにて語学留学中の志村です。だいぶご無沙汰してしまいましたが、今回は前回の宣言通り、“語学学校”とはそもそも何なのか、どんなところが面白いのか、僕の通っているCIREFEについて触れながら紹介したいと思います。

まず、フランス留学と一口に言っても千差万別いろいろありますが、“フランス語”だけは絶対の共通項。そのフランス語を集中的に学ぶのが、文字通りですが語学学校なわけですね。ところで、集団には普通いつでも“目的”が伴います。経済学部なら経済を、法学部なら法を勉強してあわよくば仕事で活かすのが目的でしょうし、料理教室の目的は上手に料理ができるようになることです。そうやって自然と、世代的にも趣向的にもどことなく似通った人間が集うことになります。しかし、語学学校の場合どうでしょう?まずこれを考えないといけません。ポイントは二つあって、まず一つには、言語というのはあらゆる意味でも専門的ではなく、生活の全般をカバーするものであるということ。人が生きていくことの根底にあるものであるということ。そしてもう一つは、フランス語を学ぶための場所である語学学校がフランスにあるということです。フランスに暮らしている人にとっては、フランス語は目的というよりは成し遂げなければならない課題であったりします。つまり、ここに集う人たちは必ずしも同じ目的を持ってはいません。というか本当におそろしいくらいバラバラです。“le français”(フランス語)というあまりに漠然としたものを頭の上に乗っけて人が集まって来るのです。自国で出会ったフランス人と結婚し、フランスに移り住むにあたってフランス語の習得が必要になったロシア人、もともとムスリムだったけれどキリスト教に改宗したために母国に住めなくなり、政治難民としてフランスへの移住を決めたイラン人、かれこれ15年近くフランスに住んでいるから会話は難なく出来るけど、文法がまったくわからないアルバニア人、フランスの大学に進学するためにそれ相応の語学レベルに達するべく、その準備段階として通う中国人、ほとんど興味本位で一年ふらっとやってきた日本人、などなど、てんでバラバラ。これが語学学校の大前提です。

そんな、国籍も年齢もまちまちな僕たちを区切る唯一の指標が、やっぱりフランス語です。僕の通う語学学校CIREFEでは、A1,A2,B1,B2,C1,C2と進むにつれだんだんレベルが上がっていきます。これはDELF・DALFという国際的なフランス語能力認定試験のレベルに準じています。レベルごとにどんなことをやるのか大まかに説明すると、Aレベルでは基本的な初級文法や簡単な日常会話の習得、Bレベルでは最終的には精緻な文法理解とある程度の会話能力の会得、Cレベルでは文法も会話もできて当然で、文章の統括や高度な口頭発表ができることなどが求められます。なんて言いますが、“語学力”ほど曖昧なものはなく、各人の能力を6つにすぱっと分けるには自ずと無理が生じます。僕の場合を例にとってみると、去年9月の入学時、最初に振り分けられたクラスはB2でした。CIREFEの場合クラスの振り分け試験は筆記しかなく、僕は当時すでにある程度文法を理解していてたいしたミスもなく文章を書くことができたのでB2に認定されたわけですが、これは必ずしも僕の能力を正しく反映しているわけではありません。たまたま僕のいちばんの強みが評価基準になっただけで、他の能力、特に聞き取りなんかは間違いなくAレベルだったと思います。だから最初は本当に苦労しました。なぜなら、B2ともなればある程度は聞き取れて当然とみなされ、先生たちもとくにゆっくり話すでもなく普通に授業を進めるからです。そう、フランス語の学校なのに授業で使う言語もフランス語というのはなかなか盲点かもしれません。そんな“ズレ”に苦しまされ、なんだ先生いったい何を言ってるんだと苦労している僕の横で、すでにペラペラだった例のイラン人は僕からしたら知ってて当たり前の文法事項でつまづいたり、ごく簡単なディクテ(これはゆっくり言ってくれるから助かる)で聞き直したりしているのです。これはまったくもって謎でした。いや、今でも謎です。

謎です。

なんで文法がわからないのに話せるのか?

なんで自分で言ってることを書けないのか?

なんで書いてあることを正しく読めないのに会話ができるのか?

ただ、やはりよく聞いてみるとそういう人(ヨーロッパ系が多い)はかなりむちゃくちゃなことを言っていたりします、それでも通じるのがやはり謎ですが。もともと近い言語を持つスペイン人なんかはずいぶん適当なことを言っても大枠は外さずに会話が出来るのです。対して日本人や中国人なんかは、正しく話さなければと思い詰めて結局何も言えなかったりします(とくに日本人)。言語に限らずものごとは遠くから見た方がよく見え、そんなわけで僕らアジア人は丁寧にコテコテに文法を理解していくしかないのです。

[caption id="attachment_178" align="aligncenter" width="300"]R0013959 前期B2、文法の授業の最終回。最終回ということで先生がワインやお菓子をふるまってくれた。[/caption]

ただ、今は最初のクラスがB2で本当によかったと思っています。確かに苦労はしましたが、そのおかげでつく能力があるのも確かです。最初は何もわからない子供のようでしたが、たからこそ、がむしゃらにもがいてついていけるようになりました。ここで一つアドバイスをするなら、もし語学留学を決め、出発までに時間があるなら、文法など日本にいても勉強できることは十分に身に付けてから来た方が絶対にいいです。文法は、戦うための武装であり、踊るための衣装です。ちゃんと着替えてから来れば、あとは実践あるのみ。時間は限られているのだから、その方が効果的なのは歴然としています。あともう一つ言うなら、B1でどうなのかは知りませんが少なくともAレベルでは学生同士の会話はほとんど英語になってしまいます。フランス語は習いたてなのでしょうがないことですが、せっかくフランスにいるのになんとももったいない気がします。B2で英語を話すのはアメリカ人とあまりに英語がペラペラなやつの間くらいで、他はみなフランス語で話します。

そうそう、これが面白いのです(笑)。みんなが喋る、各国アレンジのフランス語を聞くことができるのは語学学校の醍醐味の一つです。とくに英語、スペイン語、中国語など癖の強い言語の話者のフランス語にはたいていの場合、母語が憑依します。もともと平坦な言語であるはずのフランス語に波が生まれるのです。これを避けるのは相当むずかしいようで、だからまったく癖なくフランス語を話すアメリカ人なんかを見ると僕は感心します。その点日本人は有利です。日本語もかなりフラットな言語ですから、フランス語の流れるようなリズムをそのまま受け入れることが出来ます。ロシア系やアラブ系は、見ているとかなり語学習得に長けているようです。癖もないし、発音もかなりはっきりしている印象ですが、これはロシア語やアラブ語にもともと多くの音が存在しているからだそう。

このように、フランス語を通していろいろな国の人たちと仲良くなれることが語学学校のいちばんの魅力だと思います。まったく違う文化で違う時代を生きてきた人と、共通の目的であるフランス語を通して対等に語り合うことが出来る。これはなかなかない経験です。日本にいてはなおさら持てない機会でしょう。

[caption id="attachment_177" align="aligncenter" width="300"]クラスのみんなでのフェット(ソワレとも言う、飲み会のこと)。右下の髪ながいのが僕 クラスのみんなでのフェット(ソワレとも言う、飲み会のこと)。右下の髪ながいのが僕。[/caption]

ではでは今回はこの辺で!

志村 響

2014年3月16日日曜日

“日本茶をパリで身近な存在に!” 寿月堂パリ 丸山真紀様インタビュー

こんにちは、エセック留学中の榎本です!

日々フランス留学中の学生をお届けしている本ブログですが、今回はインタビュー形式で、パリで日本茶の普及に邁進しておられる寿月堂パリ ディレクターの丸山真紀様のお話をお伺いしてみました。

[caption id="attachment_154" align="aligncenter" width="300"]青ほうじ茶(飛騨高山産、緑のお茶)を出していただき、味わいながらのインタビューとなりました 青ほうじ茶(飛騨高山産、緑のお茶)を出していただき、味わいながらのインタビューとなりました[/caption]

僕の好みで“フランスでビジネスをする”方向に質問が少し偏っていますが、大変興味深く面白いお話をお伺いすることができました。ぜひご覧ください!

―まずは寿月堂のご紹介をお願い致します。

「寿月堂の源流は、父が六代目となる丸山海苔店にあります。丸山海苔店は安政元年(1854年)の創業です。父は祖父を継ぐ以前に花王でニベアのブランディングなどを担当していたことから、父の代となってから丸山海苔店に本格的なブランディング手法を持ち込むようになりました。“日本一美味しい海苔”を自慢に三ツ星レストランで利用していただいたり、流通を通さない売り方、銀座歌舞伎座への寿月堂の出店、数多くの商標登録など様々な角度からブランド構築を行ってきました。寿月堂は丸山海苔店と別ブランドとして、お茶を専門に扱う店として2003年に築地にオープンしたのです」

―とすると、フランスでの出店は最近になりますか。

「こちらへの出店は2008年になります。2003年に夫の駐在にあわせ再びパリにやってきましたが、日本で働いていたJICA(国際協力機構)に、ここフランスでも再就職しました。子供ができ仕事を辞めた後で、2005年ごろから手探りで寿月堂パリの出店を模索し始めました。2006年10月にフランスの国際食品展示会SIALに出展し、多くの反響を頂き出店の確信を得たといったところです。出店地が決まると次は店舗設計ですが、こちらは縁あって建築家の隈研吾先生にお願いする運びとなりました」


[caption id="attachment_155" align="aligncenter" width="240"]inside 店内カウンター席の様子[/caption]

[caption id="attachment_156" align="aligncenter" width="240"]SOUSSOL 地下にはお茶室を設置してある[/caption]

―フランスで地道に営業を始め、今では多くの有名レストラン・ホテル・デパートでの取り扱いがある寿月堂ブランドですが、日本茶を広めていくにあたって苦労や印象に残る経験などはありましたか。

「多くの店では“お茶は無料で出すもの”という認識があった上に、食中に飲むのは一般的ではなく(水・お酒・コーラなどソフトドリンクが一般的)、そういったフランスにおける常識を打ち破っていく必要がありました。ここを有料にして美味しいお茶を出してはどうか、という提案が大変受けが良かった。数年前は“有料でお茶”というアイデアに抵抗があったレストランも、最近になって向こうから連絡が来ることもあります。少しずつ日本茶をお金を出して楽しむという発想が浸透してきています。また展示会での商談を経て、原材料としてお茶を使うアイデアも大変多く出ました。抹茶塩をつくるために抹茶を出す、といった具合です」

[caption id="attachment_161" align="aligncenter" width="206"]expresse 2 仏誌EXPRESSEより[/caption]

「もう一つ勉強になったのは、パークハイアットホテルに営業させていただいた際に言われたこと。それ以前は、ただ“日本”を武器に売ってきたんです。“日本ですよ。日本のお茶ですよ”、と。パークハイアットには、“世界の一流の人が集まるホテルだから、世界で一番いいお茶を提供したい。日本であることが重要なのではなく、世界で一番のお茶であることが重要だ”と言われました。それ以来、“日本茶です、ゆえに良いものです”ではなく、“世界で最もおいしいお茶です、ところでこれは日本茶です”という薦め方をするようになりました。別に日本に大した興味があるわけではなく、純粋にお茶を愛している方もいるわけです。このとき、日本を押し出したブランディングは成功しないですよね。いいお茶をだしていることが重要で、それが実は日本のものであった、という日本茶の愛され方が理想的だなと思っています」

―“フランスで売る”にあたって意識しているブランド構築・維持の考え方などはありますか。

「“歴史を語りブランドを語る”ことを意識しています。歴史はフランス人の知的好奇心を刺激し、ブランドイメージ形成に磨きをかけます。また出店地がサンジェルマン・デ・プレ地区、富裕層の住むエリアですが、彼らの来店を企図して出店した思いもあります。また商品の魅力の伝え方も工夫してあります。パッケージも刷新し、商品名についても長いネームは全てシンプルな日本語に変えて販売していますね」

―販売方法はどのように細分化されますか。それぞれの感触はいかがですか。

「インターネット、店売り、BtoBの3つの柱で動いています。サロン・ド・ショコラ、ジャパンエキスポなどイベントへの出展にも力を入れていますね。店売りについては、販売・喫茶・イベントがあります。毎週土曜日のお点前の体験が大変な人気ですね。フランスでは料理教室がかなり流行っていますが、お茶・海苔についても同じ感触を受けます。やはり全く知らない商品を単に売ることは難しく、アトリエや語りを通じて魅力に気づいてもらおうとしているんです。店舗からの売り上げが多く、BtoBとインターネットの売上割合を上げていきたいところです。インターネットは、フランス自体がネット販売を嫌悪してきた経緯もありやっと最近伸びてきたところですから、今後期待できますね」

―フランスを中心にしながらも、諸外国への販売網拡大はどうでしょうか?

「フランスを出発点にヨーロッパ諸外国へ拡大させようともしており、スイス・ドイツ・ベルギー・スウェーデン・オランダなどで良い感触を得ています。やはり始めは富裕層が対象となりますね」

―日本茶を広範な層に広めたい思いはあると思います。富裕層を超えた普及への取り組みはありますか。

「そうなんです。ジャパンエキスポなどを通じ“伝統”にとらわれない若者への拡大も考え始めていまして、“抹茶のスタバ”を企図して二店舗目を検討しています。ただし、フランスでは立ち飲みが実は少ない」

―仰る通りですね。外国資本、それこそスターバックスぐらいのものという印象です。

「そうですね。また立地も重要で、この店舗が立地するサンジェルマン・デ・プレは富裕層・セカンドハウスをもつ外国人・資本力のある観光客のためのエリアと言っていいでしょう。人通りは少ないが、重要な顧客が訪れるわけです。抹茶ドリンクを提供するような店舗の場合、“寒くても人が通る”元気のあるエリアへの出店が求められます。マレあたりはどうかと考えているんですよ」

―マレというと、モードの発信地であったり、かわいい雑貨屋であったり、若者に人気のある賑わいあるエリアですね。
ところで、フランス人は欧州諸外国と比較して日本人が好きと言われます。それについてどう思われますか?それに対応したビジネスの在り方などは工夫されていますか。

「日本好きはフランス人のうんちく好き・好奇心旺盛さに由来するのでしょう。大きく異なる形で文化的成熟を迎えた日本を知ることは、彼らにとって一つの教養になるのです。そして好奇心が強い人は富裕層に多いということも、ビジネスとしては利点となっています。また若者をみても、ジャパンエキスポで抹茶ドリンク片手に写真を撮るコスプレをしたフランス人の若者をみていると日本への強い関心と、それに比例したビジネスチャンスを感じます」

―フランスで日本茶を売るにあたって直面した日本との違いなどはありますか?お店にいらっしゃるフランス人の反応をみて、新たな学びなどはありましたか。

「海苔とお茶、の組み合わせは日本では極めて一般的なことです。海苔を卸す需要はお茶と共にあり、またお中元・お歳暮など贈答において組み合わせて使われてきました。ただしこれをフランスで理解されることは難しく、質問されることが多いですね」
「価格設定ですが、初めは何せ手探りでしたから、基本的な商品を揃え、商品理解も難しいはずであるから価格も安めに設定しました。すると、“こんな玉露はあり得ない。安すぎる”と逆にお客様に高い商品を求められたんです。高いものが良いもの、という考え方が強く、価格も高めに設定するようになりましたね。一方フランス人がどこまで価格の価値を理解しているかは不明で、“玉露”というブランドイメージから美味しいに違いないと信じているような人もいます。抹茶が葉でなく粉だと知らない顧客もいて、説明に苦労したり…(笑)」
Alain et Daniel

「そもそもお茶を全く知らない人は、店にはなかなか来ないです。展示会では興味本位の人が多いですけどね。以前から教養としてお茶を知っている人であったり、日本独特の”旨味”が分かるような人が来るわけです。これでは、日本茶をフランスに広めることはできません。この学びから、出店する二号店は甘い抹茶ラテや抹茶アイスクリームのように、単に日本の味を押し出すのではなく、一ひねりしてフランス人の趣向に合わせたものを提供していく予定です」

―日本茶を広めるにあたり、今後の展望はいかがですか。富裕層の街パリといえど、欧州全体の不景気も相俟って懸念材料もあるのではないでしょうか。

「イギリスはお茶文化、フランスはカフェ文化と呼ばれていましたが、健康志向から近年カフェインが少ないお茶がブームになってきているんです。マリアージュフレールやKUSUMI TEA、ルピシアなど、お茶を扱いフランスで人気を増しているブランドは増えています。確かに不景気のなかアパレルは冴えませんが、依然として食品は強いですね。フランス人のエンゲル係数、高いですよ。“外側でなく中身から”の意識が徹底していて、食事にはお金をかける。その点で、商品の価格改定だけでなくよりプレミアムのついた商品も扱っていくことを検討しています」

―店舗にはお茶道具も置いてありますね。日本茶を求める人は、これらも買っていくのですか?

[caption id="attachment_158" align="aligncenter" width="199"]Jugetsudo 2-13 691Natsume 輪島塗のお棗[/caption]

「お茶道具とお茶そのものの需要はなかなか結びつかないんですよ。茶器は、骨董品好きやコレクターに受けます。お茶を飲みたい人、お茶道具を集めたい人、は綺麗に分かれるわけです」


―海苔は、お茶に比して評判はどうなのですか?

「海苔はBtoBで卸すことにほぼ特化しており、店舗での売り上げは少ないですね。日本人はお茶をたくさんもっているので海苔を買ってくれますが、フランス人はそもそも茶葉を持っていないのでお茶の方をたくさん買ってくれます。海苔の方が受け入れられるのに苦労しますね」

―エセック留学やパリ第三大学での修士取得など学問的な部分を含め、フランスで長期に渡り多様な経験をされてきた丸山さんですが、長く暮らされてみて、“日本人がフランスで暮らすこと”を、どう感じられますか。

「この20年で相当変わったと思います。エセックへ留学していた頃は、アジア人でひとまとめにされていましたよ。今は本当に日本に対して尊敬の念を持っているように感じます。特に、3.11の影響が大きかったのではないでしょうか。“あの脅威にここまで勇気をもって闘い、助け合った国はない”、と。たくさんのフランス人が泣きながらお店にかけつけてくれたんです。これに関連して日本的な生活、日本的な精神文化を評価する動きを感じます。例えば10年前には、日本がこのようにポジティブに捉えられることはなかったんですよ」

―このように日本が評価されていくなかで、新しいビジネスチャンスを感じられることはありますか?

「伝統工芸の方々がお店に商品営業をしてくれることも多いですが、伝統工芸品の販売はなかなか難しいのが現状ですね。ただし、クリスマスは唯一買ってくれる人が多い時期で、カップルで“あの茶器を買ってあげるよー、色は何がいい?”などと話していたりします。少しモノが変わりますが、マッサージ器などが近年流行りだしたようですね。フランスにはいわゆる”癒し系”のプロダクトが大変少なかったですから、その点で随分進んでいる日本にはビジネスチャンスがあるかもしれませんね。そして先ほど申した通り食品はまだまだ安定しているので、オペラ地区(注:日本人居住者の集まるエリアで、日本レストランや書店などが多く並ぶ)以外にもレストランの展開はできるでしょうね」

―学生へのアドバイス等があれば頂戴できますでしょうか。

「若いうちは、好き嫌いなく好奇心をもって人と付き合うことです。年齢を重ね、余裕ができると、苦手な人を避けても生活はできてしまう。そこから新しい人間関係をつくることはとても難しいと思います。」

―有難うございました。

最期に、フランス留学をしている学生へのメッセージ、またフランス留学を検討している学生へのメッセージを書いていただきました。

"フランス人の日本に対する興味、尊敬の念はここ数年更に輪をかけて増しているように感じられます。若者は日本のアニメ・POPカルチャーに興味を、また中高年の方は日本の伝統文化に興味を、そしてまた老若男女問わず日本料理は大人気で、本当にありがたい限りです。留学生のみなさん、またフランス留学を検討している皆さん、もっともっと日本の素晴らしいところをアピールしていってください。そうすることで、留学生活が、色々な広がりを持つことは確かです。"

丸山様、ご多忙の中ありがとうございました!
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丸山真紀 様
東京都築地生まれ。慶応大学法学部法律学科卒業後、途上国開発援助プロジェクトマネージメントに6年従事、アジア、アフリカを数十カ国にわたり回る。2003年よりパリ在住。2005年より寿月堂パリプロジェクトに従事し、2008年にパリ店をオープン、現在に至る。実家は海苔の老舗、丸山海苔店。
Maki MARUYAMA

仏テレビ番組"Goûts de Luxe"出演のご様子はこちらをクリック!

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寿月堂パリ
2008年10月にパリ6区サンジェルマン地区に寿月堂初の海外店舗としてオープン。日本茶専門店として、静岡、鹿児島、京都等を産地とする高級日本茶を提供、茶器も扱っている。地上階には5席の喫茶スペース、地下は茶道具等の展示スペースとなっており、また土曜日には、お点前の体験講座も開催している。
店舗設計は隈研吾氏。
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